諸子が医師になる時のために,学生時代から是非しておいてほしいことを二つ述べる.
1.医学の基本的知識を広く身につけること.
学生時代に基本的知識を身につけることが大切である.卒後の進路を決めていない人はさておき,ある程度考えている人が「臨床に行くつもりなので基礎は関係ない」,「小児科に行くのだから外科は関係ない」等々とおかしな理屈を言うのは無用にすべきである.
なぜか? 医師の就く仕事の場では,それが臨床であれ研究であれ専門外の知識としてのいわゆる医学常識(基本知識)を問われることが思いがけないときに,極めてしばしば訪れる.この常識が貧弱なほど思考の出どころが限られる結果,“出来ない”医者に留まり,豊富なほど“出来る”医者となるからである.あの大学出身の医者は出来がよい,と聞くと私は,その大学の学生がよく勉強して広く基本的知識を身につけているのだと考える.
2.同じ間違いを二度繰り返さない習慣をつけること.
人は間違いをおかす.学生において然り,医師でも然りである.もちろん,一度の間違いが重大な事態を招くこともあるが,同じミスを繰り返すとすれば日常的にはそれも許されない問題である.これを防ぐ意識と習慣を学生時代から身につけなければならない.
どうするか? おかした間違いを真剣に反省し,なぜそうなったのかを突き詰め,防止策をしっかりと心に刻んで次に備えるのである.当たり前のことであるが,このような習慣をつけて実践すればリピーターになることを避けられる.
余談:私は,小児科医であった父と兄と共に小児病院を作ろうと考えて小児外科を選んだ.病院は叶わなかったが,それでも小児外科医になったことに心から満足している.その理由はこの頁の他稿で熱く語られている小児外科の魅力を満喫したからに他ならない. |