小児外科で治療する病気

食道アカラシア

概念
消化管には,縮んだり緩んだりすることを繰り返して消化管の中味を順に送り出す力があり、これを蠕動運動(ぜんどううんどう)といいます.食道でもものを食べたあとには蠕動運動がおこり,食べ物はスムーズに胃へ運ばれていきます.しかし胃に近い部分の食道の壁の中の神経に異常があるために,その部分の食道の筋肉がいつも縮んだ状態となって蠕動運動がうまく行われず,その結果食べ物が通りにくくなる病気のことを「食道アカラシア」と言います.この病気は10万人に1人というまれな病気で,成人で多くみられますが小児でもみられる病気です.

症状
食道の最後の部分(胃に近い部分)で食べたものが通過しにくく食べた物が食道内に停滞するため、飲み込みにくくなったり(つかえ感),飲み込んでも食べものを吐いたりします.この状態が続くと栄養が十分に摂れないためやがて体重が減ったりします.また食道の中に食べ物が常時残っているため食道の壁に炎症が起こると胸やけが胸の痛みを感じることがあります。さらに吐きやすくなるため、吐いたものを気管に吸い込んでしまい肺炎を繰り返し起こすこともあります.

診断方法
食道透視検査、食道内圧検査によって診断します.食道透視検査では,食道の最後の部分(胃に近い部分)にくちばし状に狭くなった変化(狭窄、といいます)と,口側の食道に太く広がった変化(拡張、といいます)がみられ,造影剤(レントゲンに映る検査用の液体)が食道の中に停滞して胃に流れ込まない様子を確認します(図).食道内圧検査(食道の中の圧力をはかり蠕動運動の様子を確認する検査)では,食道の最後の部分(胃に近い部分)での圧力が正常より高く、食べ物を飲み込んでも食べ物を通すために緩む変化が見られないのが特徴です.

治療方法
薬物療法、食道の狭い部分を風船様の器具で広げる方法(バルン拡張術、といいます)、手術による方法があります.薬物療法は食道の最後の部分(胃に近い部分)のを緩ませることで食べ物の通りをよくする治療ですが、その効果は一時的なことが多く、通常は他の治療も必要となります。バルン拡張術は何度か繰り返し行うことがあり,約半数の患者さんで治療効果がみられます.根本的な治療は手術です.手術では狭い部分の食道の筋肉を切開して広げます。ただし切開したままだと胃内容物が食道に逆流してしまうため、食道の筋肉を切開した部分に胃の壁を覆いかぶせます(逆流防止手術といいます).以前は開腹手術(お腹を大きく切って行う手術)で行われていましたが,最近では腹腔鏡(お腹に小さな穴をあけて行う手術)を用いて小さな傷で手術を行うことが可能になったため,手術後の痛みも少なくなりました.一方一部の専門的な医療機関では内視鏡(胃カメラ)で手術と同じように筋肉を切開する方法(経口内視鏡的筋切開術、といいます)が成人を中心に広まってきており、小児の患者さんにも少しずつ行われ始めています。しかし逆流防止手術ができないため、手術の後、胃に入った食べ物が食道内に逆流することによる症状に注意が必要となります。どの治療法がよいかは患者さんそれぞれの状況によって判断しますので、担当医とよく相談して治療法を決めてください。

外部リンク

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