肛門のまわりが赤く腫れて膿をもつようになる病気を肛門周囲膿瘍といいます。肛門の奥の粘液を分泌するくぼみ(肛門腺)や、その他の病気の深い潰瘍からの炎症が、肛門周囲の皮膚に及び、細菌が繁殖し肛門周囲膿瘍が形成されます。さらに、皮膚を穿破すると痔瘻と言われます(図1)。
乳児にできる痔瘻(乳児痔瘻)は、男の子に多いといわれています。生後1ヶ月前後から1歳位の乳児期の赤ちゃんに比較的良く見られる病気で、決して珍しいものではありません。肛門周囲膿瘍はしばしば乳児期の赤ちゃんが、下痢や軟便が続いた後に肛門のまわりが赤く腫れて膿をもつようになって起こります。赤ちゃんは痛みのために機嫌が悪くなり泣くようになります。膿瘍は良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、また肛門周囲の他の部位にも広がることがあります。肛門周囲膿瘍はひどく膿をもつようになると,皮膚に少し穴を開けて溜まっている膿を外に出してあげなければ治りません。膿を出してあげた後に、下痢を止めて便性を整え,肛門の回りの皮膚を清潔にしてあげてください。乳児痔瘻による膿瘍は再発を繰り返すことが多いので、場合によっては成人の痔瘻と同じような手術をしなければいけないときもあります。肛門のまわりが赤く腫れているのを見つけたときは、小児外科医に診てもらってください。この病気は赤ちゃんが1-2歳になりますと自然に治ることが多いようですが、まれに2歳以上になっても残ることがありますので、この時にも診察を受けるようにしてください。
図1 乳児肛門周囲膿瘍(左)と乳児痔瘻(右)
また、頻度はたいへん稀ですが、クローン病や何らかの免疫異常症のお子さんにも、肛門周囲膿瘍、痔瘻が見られます(図2、3)。この場合には、潰瘍、浮腫状皮垂、などの肛門病変を伴っている場合が多いです。肛門病変が最初に発見され、早期診断・早期治療につながる場合もあります。写真を見られると、正常の肛門や通常の乳児痔瘻、肛門周囲膿瘍とは、随分異なる印象を持たれると思います。このように、お子さんの肛門病変に関して気になることがあれば、小児外科医にご相談ください。
図2 クローン病患児の肛門
図3 免疫異常症が疑われる患児の肛門