小児外科で治療する病気

嚢胞性腎疾患

 腎臓は身体の中で嚢胞が最もできやすい臓器のひとつです.最近,超音波検査やCT,MRIの発達により,腎嚢胞の診断は進歩してきました.比較的多い代表的な疾患をあげます.文章の最後に模式図をつけてありますので参考にしてください.
1,単純性腎嚢胞
 大きさが0.5~4cmの嚢胞が,1つの腎に1~3個みられる病気です.無症状で治療は不要です.
2,常染色体優性多嚢胞腎
 常染色体優性遺伝に より,両方の腎に大きな嚢胞や小さな嚢胞が多数できる病気です.成人になってから発見されることが多く,60歳までに約50%が末期腎不全に至るという報 告もあります.肝臓,膵臓,脾臓などに嚢胞を合併することがあり,脳動脈瘤の合併も多いです.根本的な治療法はなく,腹痛や腎機能障害に対する対症療法が 主になります.
3,常染色体劣性多嚢胞腎
 常染色体劣性遺伝により,両方の腎に小さな嚢胞が多数できる病気です.1万人に1人の頻度で発生し,多くは乳幼児期までに末期腎不全に陥ります.最近は生まれる前に診断されるお子さんも増えています.根本的な治療法はなく,対症療法が主になります.
4,多嚢胞性異形成腎
 正常な腎の組織が作られず,ぶどうの房状に多数の嚢胞ができる病気です.一方の腎だけにできることが多く,その腎の機能はありません.またその腎につなが る尿管は,その一部または全部がつまっていたり,途切れて存在していなかったりします.おなかが張るなどの症状で発見されますが,最近は産まれる前に診断 されることが増えています.嚢胞のできていない側の腎にも,尿管が途中で狭くなっていたり,膀胱のなかの尿が尿管に逆流する,などの病気を伴うこともあります.治療は,以前は嚢胞のある腎の摘出術が行われました.しかし最近は,嚢胞の多くが自然に小さくなったり消えたりすることがわかってきましたので,手術をしないで経過をみていくことが多くなってきています.
5,髄質海綿腎
 腎の中の集合管と 呼ばれる部分が嚢胞状に広がる先天性の病気です.多くは両方の腎におきます.成人が見つかることが多いですが,小児でもみられます.腎結石や血尿,尿路感 染で発見されることが多いです.長期にわたって腎機能は比較的よいことが多く,結石などに対する対症療法が主になります.また,片側肥大症,馬蹄腎などに 合併することも多いです.

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