動脈管開存症(生後早期に発症するケースについて)
病態
動脈管は大動脈と肺動脈を橋渡ししている血管で、胎児ではみんな開存しています。出生後しばらくは開存しているものの、2、3週間のうちに自然に閉鎖してしまうのが普通です。本症は動脈管が自然閉鎖せず、その血流が増加することにより起こります。肺血流が増加することによる心不全や、全身に巡る血流が減少することによる循環不全が本症の病態です。生まれて間もない新生児では生後24時間以降に起こりやすいです。
心雑音を聴取したり、頻脈、脈圧(収縮期血圧-拡張期血圧)増加、呼吸障害(多呼吸、陥没呼吸、酸素需要の増加など)が見られ、肺出血や酸塩基平衡の乱れ(アシドーシス)、乏尿、腹部膨満、消化不良、消化管穿孔といった症状が出現します。
診断
聴診:心雑音を聴取します。
超音波検査:実際に動脈管を同定し血流の程度、心臓の動きなどを評価します。
胸部単純レ線:心不全があれば心肥大が見られることがあります。
治療
水分制限や呼吸管理、輸血(赤血球)のほか薬物治療が考慮されます。薬物治療としてはインダシン投与が行われます。副作用として乏尿や腎障害、消化管穿孔、血小板機能低下、低血糖などが挙げられます。インダシン投与の禁忌としては消化管出血、脳室内出血、出血傾向、重篤な腎障害などがあります。
外科的治療としては、動脈管結紮術が行われます。手術は小児心臓血管外科医、もしくは小児外科医が行います。全身麻酔下に開胸し、直視下に糸で結紮、もしくは血管クリップをかけて血流を遮断します(図1, 2)。
手術適応となるのは、心不全が進行性で、内科的治療を繰り返す時間的余裕がない場合、インダシン投与を行っても、無効で症状が増悪する場合、インダシン投与が禁忌の場合、長期の水分制限を必要とし、体重増加不良を認める場合などです。
手術の合併症としては、術中出血のほか、気胸、肺出血、反回神経麻痺、横隔神経麻痺などが挙げられます。
手術後もすぐに循環動態が安定することは少なく、数日は厳密な集中治療管理を必要とします。
図1 動脈管の同定