医療品質評価とFeedback機能
医療品質評価の目的は、その名の通り、医療の質を評価することを通じて、結果的に医療水準の維持・向上に役立てようとするものです。手術など侵襲的治療を行う場合、術前にその術式の有効性だけでなく、危険性や合併症についてインフォームドコンセントを行うことの重要性は既に認識されていますが、様々な背景や重症度をもつ患者個別の危険性(リスク因子)や合併症(アウトカム)予測についてはデータが揃っていないため一般的な理解に基づいて治療方針決定をせざるをえないのが現状でした。また、病院間の治療成績を比較する際も、重症患児を多く受け入れている施設の成績が悪くてもそのまま「その施設の治療成績は悪い」と解釈してしまう訳にはいかず、当然重症度などの患者背景(リスク因子)を加味する必要があります。医療品質評価を行っていく上ではこのリスクの調整は必須となりますので、代表的な小児外科術式のリスクを調整するためのリスクモデル作成を進めてまいりました。「モデル」とは、結果を予測するために原因と結果の関係を単純化した数式として表したもので、リスクを調整するリスクモデルを用いることで、治療の特性や個々の症例の術前状態(リスク)から死亡率や合併症発症率等(アウトカム)を予測することができます。リスクモデルの詳細情報については、小児外科:リスクモデル補足資料、小児外科:リスクモデル補足資料別紙をご確認ください。
これまでに登録された小児外科データに基づいて構築されたリスクモデルにより、代表的な12の小児外科手術術式*を受ける患者の術前リスクに基づいた死亡率、合併症発生率などのアウトカムを予想することができるようになりました。令和2年11月26日にNCDフィードバック機能として実装され、利用可能となっています。詳細は下記のとおりです。
- リアルタイムフィードバック:各症例登録画面の「術中情報」欄の最下段に、新たに「小児外科 リアルタイムフィードバック」のボタンが現れます。症例ごとの手術関連死亡、術後合併症の予測値(%)を見ることができます。
- フィードバック機能:NCDユーザー専用ログインページにログイン後、「各種通知」の右側にある「フィードバック機能」ボタンを押してアクセスします。
- -1 Risk Calculator(リスクカリキュレータ):登録データに基づいて構築されたリスクモデルを用いて、手術を受ける患者の死亡率や合併症発症率等の予測値を計算することができます。
- -2 施設診療科の患者背景とパフォーマンスの全国比較(パフォーマンス指標):患者の術前リスクに関する項目の集計結果、および、登録データに基づいて推定された自施設診療科のパフォーマンス(死亡率や合併症発症率など)を確認することができます。
*12 術式:消化管穿孔手術、イレウス手術、噴門機能再建、鎖肛根治術(高位・中間位)、悪性腫瘍手術 (全摘・亜全摘)、肺切除術(葉切除・区域切除)、漏斗胸手術、ヒルシュスプルング病根治 術、胆道閉鎖根治術、胆道拡張症手術、腸回転異常症手術、気管形成術(気管狭窄症手術)
ご使用いただいてのご質問・ご意見・ご要望は、学会事務局までお寄せください。