講演概要 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成17年6月3日(金) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成17年6月4日(土) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
講演概要 |
I.トピックス |
1. 胎児医療 聖マリアンナ医科大学小児外科 北川博昭 先生胎 児医療はHarrisonらによっておこなわれた下部尿路閉塞に対する胎児尿路―羊水腔シャント術から始まり,その後子宮切開によるopen fetal surgeryに移行した.先天性横隔膜ヘルニア(CDH),CCAM(Congenital cystic adenomatoid malformation),尾仙部奇形種,髄膜瘤などに試みられるようになった.その後種々の改良が加えられ,近年CDH,尿路閉塞症患児の長期予後結 果が報告された.しかし,その長期予後では胎児手術例と出生後治療例で差が認められないとの報告も散見される.今回,今までの胎児治療を振り返り,動物実 験モデルを参考に胎児医療の現況と未来について話す. |
2. 小児外科とリスクマネージメント 順天堂大学小児外科 小林弘幸 先生医療事故による医療訴訟の件数が年々増加しているのは周知の事実であり,昨年度は1000件弱と過去最高の件数が報告されており,小児の訴訟例では判示認容額が一億円を超える判例が多いのが現状である. 医療事故は,1)防げることと(リスクマネージメント),防げない事故があること.2)訴訟に至るものは,事故の重症度と決して比例していないことが特徴である. 医療事故の発生をなくすことが,もちろん最終目標であるが,不幸にも予期せぬ事故が起きたとき,医療従事者が何をすべきかを考えることが重要なポイントである. |
3. 腫瘍関連遺伝子の基礎的アプローチ 千葉大学小児外科 松永正訓 先生神 経芽腫の分子細胞生物学は,DMs, HSRの発見から始まった.増幅した未知の遺伝子をクロニーングしようとする競争はN-myc遺伝子の発見につながった.今日では,神経芽腫の増殖と分 化・退縮といった両極端な生物学的特性は,N-mycとNGF-trk Aの2つの分子により説明されると言っても過言ではない.本講義では,神経芽腫を中心とした小児がんの分子病態解明の発展の過程を振り返り,基礎的アプ ローチから臨床応用への展開を解説する. |
4. 漏斗胸 川崎医科大学小児外科 植村貞繁 先生最近,漏斗 胸に対する侵襲の少ない新しい手術法(Nuss法)が注目され,患者・家族がその手術を望むことが多くなった.このセッションではまず漏斗胸の疾患概念, すなわち漏斗胸では何が問題となるのか,を理解してもらう.次にこれまでの手術法の歴史と術式を解説し,Nuss法の術式についてビデオ画像を用い,でき るだけわかりやすく解説する.手術のポイント,合併症の予防対策や長期経過の問題点も詳しく述べたい. |
II.腫瘍 |
1. 神経芽腫 千葉大学小児外科 幸地克憲 先生テキストでは,神経芽腫における発生,組織分類,各種画像診断法,病期分類,進行神経芽腫における治療法(化学療法,手術,放射線治療,末梢血幹細胞移植など)と予後について記載する. 実際のセミナーでは,神経芽腫の手術法(腹腔鏡手術,開腹術),術中照射などについてビデオを中心とした説明を行い,臨床に即した講義を行う. |
2. ウィルムス腫瘍 国立成育医療センター 外科 北野良博 先生Wilms 腫瘍は,胎生期の後腎腎芽細胞の小集落(nephrogenic rest)より発がんした腫瘍で,わが国では毎年100例前後の発生があると考えられている.集学的治療により治療成績は向上しており,日本では1996 年に発足した日本Wilms腫瘍スタディーグループにより,症例の集積と治療の標準化が行われつつある.本講では,鑑別診断,治療の要点,関連遺伝子等研 究面でのトピックスを解説する. |
3. 肝悪性腫瘍 名古屋大学小児外科 瀬尾孝彦 先生小 児肝悪性腫瘍は小児固形腫瘍の中でも稀であるが,特にその中では頻度の多い肝芽腫は,集学的治療が予後改善につながる重要な腫瘍の一つである.肝芽 腫,肝細胞癌,その他の肝原発悪性腫瘍などの各腫瘍について,発生原因,臨床像,診断法,治療法などに言及する.また,本邦では日本小児肝癌スタディグ ループが統一した治療方針を作り,治療成績の向上に努めており,それに関しても言及する. |
4. 奇形腫・横紋筋肉腫 東北大学小児外科 中村 潤 先生胚 細胞腫瘍ならびに横紋筋肉腫は小児外科領域における重要な固形腫瘍の一部を構成する.本講では,両疾患における基礎的,臨床的事項につき自験例を紹介しつ つ示すとともに,横紋筋肉腫に対し本邦で試みられつつあるJRSG(Japanese Rhabdomyosarcoma Study Group)の取り組みついても触れる予定である. |
III.関連領域 |
1. 神経因性の膀胱・直腸障害 獨協医大越谷病院泌尿器科 中井秀郎 先生小 児における排尿および蓄尿障害の原因は多岐にわたるが,神経因性膀胱はそのひとつである.先天性の場合,乳幼児期のオムツ排尿の時期には見過ごされやす く,尿路感染症や排尿習慣自立の遅れを契機に,ようやく精査や治療が開始されることが,今なお多い.問題は,このような有症候期には,既に腎臓や膀胱の不 可逆性病変(腎実質の慢性萎縮,膀胱平滑筋の繊維化など)が進行していることがしばしばあることである.後手に回った治療と予防的治療の成績に,大きな開 きが出現するのは自明の理であり,急性期はともかく,思春期以降の腎,排尿機能の予後は,関わった小児医療担当者の能力に大きく依存することを強く認識す べきである.髄膜瘤のような随伴症状を持たない,原因不明の神経因性膀胱に対しては,排尿症状や膀胱造影の異常所見を見逃さずに診断につなげていくことが 重要である.後天的には,脊髄腫瘍やその近傍腫瘍による術後神経因性膀胱の頻度が高い.先天性の神経因性膀胱での成長後の場合も同様であるが,これらの患 児には,尿禁制獲得への保存的,手術的な取り組みを積極的に行い,失禁ケアの領域をリードすることが重要である.一般的に小児の排尿機能学は,まだ体系化 が不十分であるが,昨今,臨床的,頻度的に非常に重要な領域となっている.
都立清瀬小児病院外科 広部誠一 先生 二 分脊椎などの神経因性直腸肛門機能障害では肛門括約筋の麻痺,肛門管の知覚障害のため溢流性失禁を認める.その排便管理のため定期的な経肛門的洗腸法が行 われてきた.さらに効率の良い洗腸法として虫垂をカテーテル導入路として皮膚に開口させる順行性洗腸法(MACE法:Malone antegrade continence enema)が開発された.本講義では2分脊椎の排便管理の基本方針と,その中でのMACE法の適応,意義を中心に概説する. |
2. 熱傷の管理 愛知医大形成外科 横尾和久 先生熱傷は小児 における外傷の代表的なものである.また全熱傷患者のうち乳幼児が占める割合は他の年代に比較して際だって高く,熱傷患者の約4分の1が4歳未満の乳幼児 である(名古屋市消防局資料).外用療法のみで対処可能な軽症熱傷が多いが,受傷面積が広範な重症熱傷になると全身管理が必須となるし,初期の輸液管理の 良し悪しは予後に大きく影響してくる.創閉鎖のための植皮術を施行する場合も,後遺障害(瘢痕拘縮)に対する将来の治療まで見越した観点が必要である.小 児熱傷に特有の注意事項を中心に概説する. |
3. 小児外科疾患に合併する先天性心疾患の管理と治療 大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科 稲村 昇 先生対 象の小児外科疾患(PSD)は新生児入院となった668例で先天性心疾患(CHD)合併は103例にあった.外科治療は99例に行い68例はPSDを優先 し,19例はCHDを優先した.PSDを優先した68例中11例が術後循環不全を呈し,4例が死亡,7例が術後早期にCHDの手術を要した.この11例の PSDはTEF(n=7), 鎖肛(2), CDH(1), 十二指腸閉鎖(1)であった.循環不全の原因は9例でPDAが関与し,2例で房室弁閉鎖不全であった.新生児期に治療を要するPSDではPDAの管理が重 要である. |