小児外科で治療する病気

臍腸管遺残・尿膜管遺残

臍腸管遺残・尿膜管遺残とは
胎児の腸と臍帯(へその緒)は胎生早期の胎児への栄養供給のため,卵黄のう管(臍腸管)でつながり,膀胱は胎生早期の老廃物を母体側へ排泄するため,臍帯と尿膜管でつながっています.臍腸管は胎盤からの栄養が確立する胎生7~9週に消失し,尿膜管は胎生4~6週に退化して索状化し膀胱と臍(おへそ)とのつながりはなくなります.臍腸管・尿膜管が消失せず遺残してしまったものを臍腸管遺残・尿膜管遺残といいます.

病型分類
 遺残組織がどこに残るか,つながりがあるかなどで分類されます.臍腸管遺残では臍部に組織が残る臍ポリープ・臍洞(臍腸管洞),臍と腸管のつながりが内腔を伴って残る臍腸瘻・ひも状に残る臍腸管索,臍腸管の一部が袋状に残る臍腸管嚢胞,腸管側に残るメッケル憩室に,尿膜管遺残では臍と膀胱のつながりが内腔を伴って残る膀胱臍瘻(尿膜管瘻),臍側に残る臍洞(尿膜管洞),尿膜管の一部が袋状に残る尿膜管嚢腫,膀胱側に残る膀胱憩室に分類されます.

症状
 臍腸管遺残・尿膜管遺残の症状は前述の病型によって発症時期や症状が異なります.臍ポリープや臍腸管洞では繰り返す臍炎(臍が赤くなったり,じゅくじゅくする)や臍部の痛み,浸出液の排泄,臍部に赤い肉芽様組織の形成を認めます.臍腸瘻では生後より臍から腸液の排泄を認めたり,腸が翻転して脱出する場合があります.臍腸管索は索状物が腸閉塞の原因として,臍腸管嚢腫は腹部腫瘤として発見される場合が多く,メッケル憩室は消化管出血や腸重積,腸閉塞などの症状を認めることがあります.膀胱臍瘻では生後より臍からの透明な液(尿)の排泄を,尿膜管洞は臍腸管洞と同様に繰り返す臍炎や臍からの浸出液の排泄を認めます.尿膜管嚢腫は感染を起こすと下腹部に痛みを生じ,新生児期から成人まで発症時期は様々です.

検査
 超音波検査,CT,MRI,臍部に瘻孔を伴う場合は瘻孔造影検査などを行います。

治療
 治療は手術による遺残組織の切除を必要とします.感染を起こしている場合は,抗菌薬投与(膿瘍形成があれば切開排膿を必要とする場合もあります)による治療で感染を治めた後に手術を行います.方法は病型によって異なり,臍洞(臍腸管洞・尿膜管洞)であれば臍部からの摘出を行いますが,臍腸管洞では臍腸管索やメッケル憩室の合併を伴う場合もあり注意が必要です.また,尿膜管洞も年長児や成人で膀胱側への遺残が長い場合は臍部の操作のみでは摘出が難しく下腹部の切開を追加したり,腹腔鏡を用いて手術をする場合もあります.新生児期・乳児期の尿膜管遺残については自然退縮する可能性があること,3歳未満では尿膜管と感染の関連が低いとの報告もあることから,幼小児期の尿膜管についての手術適応は慎重に考える必要があります.一方,幼少期でも感染を繰り返す場合や年長児の尿膜管遺残については手術による切除を必要とします.臍腸管瘻やメッケル憩室では臍腸管瘻,メッケル憩室とともに腸管の切除を行います.

新生児・乳児の臍炎について
 新生児・乳児の臍炎の多くは脱落したへその緒の断端への細菌感染が原因となります.炎症により臍部に肉芽を形成することもあります.治療は臍の消毒と抗菌薬の軟膏塗布,根部の細い肉芽に対しては結紮などを行いますが,なかなか治らなかったり,何度も繰り返す場合は臍腸管遺残・尿膜管遺残が原因となっている可能性があるため注意が必要です.臍のじゅくじゅくや肉芽がなかなか良くならない時は小児外科医へご相談下さい.

外部リンク

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