私どもの住む社会では強者と弱者という言葉がよく使われます. 私ども医師が接する病気の人々,特に生まれたばかりの新生児や乳児はこの世で最も弱いものに属するといえましょう.一方,昨今の報道ではわれわれには信じられないような幼児にたいする痛ましい虐待が頻発しております.このような状況は弱いものの見方として,小児の外科疾患の治療に永年従事してきた私ども小児外科医にとりまして許すことのできないものであり,医療により幼い子供の貴い生命を救うという小児外科医に与えられた今後の役割は大変重要であると思います. 『大人のミニチュアではない新生児,乳児』を治療の対象とする小児外科は診断,手術,術前ならびに術後の管理等の面で成人の外科と異なる特殊性があり,また治療を受ける子供だけでなく,両親,さらにそれを取り巻く人々にも細心の配慮をしなければならない等,色々な困難や苦労があります.しかし,小児外科の治療を必要とした小さな子供が,手術により元気になり,順調に成長し,30年,40年後に立派な社会人として活躍されているのを見ることは,成人の外科に従事している先生方には経験できない大きな喜びであります. |
|
順天堂大学名誉教授 駿河敬次郎 (するが・けいじろう) 昭和19年 東京帝国大学医学部医学科卒業 昭和19年~20年 陸軍短期軍医 昭和21年 東京帝国大学医学部第2外科副手 昭和24年 賛育会病院外科部長 昭和34年 米国Pittsburgh大学医学部 留学 昭和38年 東京大学医学部外科学講師 順天堂大学医学部外科学講師 昭和41年 順天堂大学医学部外科学客員教授 昭和43年 順天堂大学医学部小児外科教授 昭和61年 順天堂大学医学部名誉教授 公立葛南病院 院長 昭和52年 イタリア叙勲 Commendatore 昭和58年 ザンビア叙勲 The Order of Distinguished Service: First Division 昭和63年 太平洋小児外科学会 Coeメダル授与 平成元年 アメリカ合衆国叙勲 Surgeon-in-General Medallion 日本外科学会評議委員 |
|