急性虫垂炎は、大腸の1番口側の盲腸についている虫垂突起に炎症が起きた状態で、いわゆる「盲腸(もうちょう)」という呼名でもよく知られています。
成人になってから発症することもある病気ですが、小児期では、4、5歳頃からよく見られるようになり、小学校高学年から中学生にかけて発症する頻度が多くなっていきます。但し、2,3歳のお子さんであっても、虫垂炎を発症することがありますので、いずれの年齢でも念頭に置く必要がある病気です。
症状
症状としては、腹痛が最も多い症状ですが、成人でよく言われるような「右下腹部の痛み」を最初から訴えるとは限りません。
小さなお子さんでは、いつもより元気がない、ぐずついて機嫌が悪い、食欲が落ちる、といった症状で始まることもあります。
発症から時間が経過して炎症が進行すると、腹痛以外にも発熱や嘔吐といった症状が顕著になってきます。小学校高学年ぐらいのお子さんであれば、右下腹部を手で押さえて「ここが痛い」と訴える場合もあります。
更に炎症が進行すると、虫垂が穿孔して周囲に膿(うみ)が溜まってしまったり(回盲部周囲膿瘍)、お腹の中に膿が広がってしまう状態(汎発生腹膜炎)になります。ここまでになると高熱が続き、おなかが張って歩くのもつらいといった様子になります。
また、このような病状(炎症)の進行は、小児期においては必ずしも時間の経過と並行せずに、急激に進行することもあります。特に「糞石(ふんせき)」といって、便の塊が虫垂の内腔に詰まっている場合など、虫垂の中の圧が上がりやすく、急速に穿孔を起こし腹膜炎を発症したりすることがあります。
診断及び検査
急性虫垂炎の診断には、症状およびその経過が重要ですが、小さいお子さんでは症状を正確に伝えられないことも多く、胃腸炎と診断されて管理をされているうちに病気が進行して重症化することがあります。
急性虫垂炎が疑われた場合には、血液検査で炎症反応をチェックし、腹部レントゲンや超音波検査、場合によってはCT撮影を行い、診断と炎症の進行の程度を判断することが一般的です。
治療
急性虫垂炎であっても、炎症がそれほど進行していない場合は、手術ではなく、点滴や投薬、食事制限などで保存的に治療されることがあります。
炎症がある程度進行していても、虫垂に炎症が限局していれば、虫垂切除術を行い、1週間前後の入院で済むことが多いようです。また、最近小児でも行われている内視鏡による手術(腹腔鏡下虫垂切除術)であれば、更に入院期間が短くなる場合もあります。
しかしながら、先に述べたように、虫垂の周囲や(回盲部周囲膿瘍)、お腹の中に膿が広がってしまう状態(汎発生腹膜炎)になると、虫垂を切除した上で、腹腔内に残った膿を出すための管(ドレーン)を挿入し、手術後も留置する必要があります。このような場合には、膿を体外に出しきるまで管を挿入しておくので、入院期間が長くなります。
このように、腹腔内で膿瘍を形成してしまっている虫垂炎に対しては、急性期には抗菌薬による保存的治療を行い、一旦退院後、3カ月程度経過した後に再入院し、待機的虫垂切除術(interval appendectomy)を行うという施設もあります。