出生前の赤ちゃん(胎児)は,お母さんのおなかの中にいて哺乳をする前の段階でも,消化管の中に便を作っています.胎便と呼ばれ,腸粘液や胆汁成分,飲みこんだ羊水などからなり,出生後に赤ちゃんが初めて排泄すると,ねばねばした黒っぽい緑色をしています.この胎便が小腸や大腸につまり,腸が閉塞した状態になる病態を胎便関連性腸閉塞といいます.
低出生体重児,なかでも出生体重が1000g以下の超低出生体重児に多く発症し,また,子宮内胎児発育遅延のお子さんにも起こりやすいと言われています.腸管の機能が未熟なためにねばねばした胎便をおくりだすことができず,腸管内に停滞する時間が長くなって胎便から水分が吸収され,さらに粘稠度が増して詰まってしまうことが原因です.
赤ちゃんの多くは出生後24時間以内に胎便排泄が認められますが,胎便排泄が遅延します.そして腸が閉塞するためお腹が張り(腹部膨満),緑色の嘔吐(胆汁性嘔吐)が見られるようになります.
腹部レントゲンでは,拡張した小腸がお腹全体に広がっているのが確認され,綿棒刺激や浣腸などで排便を促しても効果が認められなければ,診断と治療を兼ねて注腸という処置が行われます.薄めた造影剤(ガストログラフィンなど)を肛門から腸内へ注入していきますが(ガストログラフィン注腸),新生児集中治療室(NICU)で造影剤を注入してその場でレントゲン撮影することもあれば,透視室という検査室に移動して造影剤が注入されていく様子を確かめながら行うこともあります.細い大腸に続いて拡張した小腸が造影され,内部に便が詰まっている様子が確認できれば,胎便関連性腸閉塞と診断されます(図1).
ガストログラフィンを注腸することによって便がやわらかくなります.詰まっていた胎便が軟化して移動可能になり,大量に排泄されれば(図2),症状が軽快してミルクを開始することができるようになりますが,1回のガストログラフィン注腸だけでは改善せず,繰り返し行うこともあります.また,繰り返し行っても改善しない場合や症状が悪化する場合には手術が必要になることがあります.まれなことですが,ガストログラフィン注腸中や経過中に,拡張した小腸がやぶれて(穿孔といいます)緊急手術が必要になることがあるので注意が必要です.
図1 ガストロ」グラフィン注腸
拡張した小腸ガスが腹部全体に認められる.ガストログラフィンを注入していくと細い大腸が造影され,内部に胎便が詰まっているのが確認され(矢印),胎便関連性腸閉塞と診断した.
図2 ガストログラフィン注腸後に排泄された多量の胎便
胎便排泄後速やかに症状は改善し,哺乳を開始した.哺乳開始後の経過も良好で退院となった.