小児外科で治療する病気

胃軸捻転

胃がねじれることによって,嘔吐,腹痛,腹部膨満などの症状を呈する病気です.
 胃を周囲から固定する組織(図1)が弱いことが最も大きな原因ですが、胃の位置が変わりやすい先天的な遊走脾や横隔膜の病気でなることもあります.
 胃軸捻転の形から,長軸捻転と短軸捻転に分類されます(図2).また症状の出方から,急性,慢性,間欠性(反復性)に分類されます.
 急性胃軸捻転は,突然胃拡張がおこり腹痛,吐き気,上腹部が張るという症状を起こします.捻転の形によっては,吐き気が強いにもかかわらず嘔吐できず,鼻 から胃に管を挿入して胃の内容を吸引しようとしても挿入が困難なことがあります.捻転が高度になると、胃に血液が流れなくなって胃が腐ったり(壊死),胃に穴が開いたり(穿孔),ショックになることもあります.診断や手術が遅れた場合の死亡率は高いという報告もありますので,このような場合は時期を逸さず外科治療を行う必要があります.
 慢性ないし間欠性の胃軸捻転では,腹痛,吐き気,嘔吐を繰り返します.症状の経過と捻転時のおなかのレントゲン写真などから診断されますが,症状が出た時の上部消化管造影によって診断がより正確にできます(図3).
 新生児や乳児にみられる慢性胃軸捻転は,胃前庭部が発育し,こどもが立って歩くようになる1歳を過ぎると自然によくなるのが一般的です.長軸型が多く,嘔吐を繰り返しますが,体位療法などの保存的治療が勧められています.
 幼児期になっても症状がよくならない慢性ないし間欠性胃軸捻転は,手術が必要になることがあります.手術は胃の軸捻転を解除し,胃を前方の腹壁に固定する 方法がよく行われますが,最近は腹腔鏡手術も行われます.遊走脾や横隔膜疾患にともなう胃軸捻転ではそれらに対する処置も必要になります.

図1:周囲からの胃の固定

図2:胃軸捻転の形

図3:反復性胃短軸捻転症

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